スケートボード 路上の言語

ESSAY

路上の言語〜スケートボード黎明期2《サーフィンの運動機構》

身体の記憶がつくる運動機構

サーファーがスケートボードに乗るときは波のイメージを頭に浮かべ、サーフィンの感覚をスケートボードに求めていたしそれは身体の動きに反映されていた。サーファーにとってのスケートボードの土台はサーフィンにあったのだ。

 

フリースタイルをやるものは、パイロンを並べその間を縫うように走るなどして一か所にとどまり滑った。初心者は乗っていることに精一杯で思い通りにデッキをコントロールするというような余裕はなく、気が向いたときどこか適当な場所で滑った。

 

唯一サーファーだけは波乗りの感覚とスケートボードに共通する運動機構を見出し、デッキをコントロールし路上と波を重ね合わせ、流れるように都市を滑った。サーフィンは波打ち際まで来たら再びパドリングをし沖に出ることが必要だが、スケートボードにはそのような仕切り直しは存在しない。

 

スケートボードに乗ったサーファーは、一本の波が永遠に続くかのように流れるように滑った。

 

 

 

大きなサーフボードを持ち海に行き着替えるという面倒なことをしなくても、スケートボードならデッキ(スケートボードの板のこと。スケーターはスケートボードのことを「デッキ/板」と呼ぶことが多い。)一つ持てばどこでも滑ることができ、手軽に波乗りの感覚を味わえる。持ち運ぶときも車のシートの足元に放り投げるだけでよいので、自分の出かける範囲であればどこでもスケートボードを持っていき滑ることができた。

 

場所は路面の状況が確保できればどこでも構わない。滑る範囲は自分の生活圏と同じであり、サーフィンのように海に入らなくてはできない、というような場所の制限はない。スケートボードは生活圏と、つまり都市と密着した関係であった。

 

 

 

スケートボード誕生当時、フラット以外で滑る可能性は十分にあった。例えば歩道から車道へ出るとき縁石の段差を下りることがあっただろう。段差を降りることに注意を払い気に留めれば、次はもう少し高さのある二、三段の階段を下りてみよう、と考えることはあったと思う。

 

そのように推測すればそこからなにか発展していく可能性も考えられるが、スケートボードを発展させた場所の一つ目は段差ではなく、ゆるく斜度のついたバンクだった。偶然バンクを見つけ滑ったところ、フラットで滑るときよりも波の感覚に似ていると気付いたのか、バンクを見た際に波と形状が似ていることに気付き興味を持ったのか。そこは定かではないが、ほとんどのサーファーがフラットよりもバンクに波乗りに近い感覚を感じたのは間違いない。

 

階段やベンチなど、都市に存在する滑れそうな形態であればどのようなものでも利用し発展していくようになるのは80年代後半からになるのだが、そのようなスタイルはひとつずつ経験と発展を積み重ねた結果構築されたものなのだ。この時代のスケーター(サーファー)はまだバンクという「地形」にしか注目していなかった。

 

 

反応の同一性

なぜこの時代のサーファーは地形に注目しその結果としてバンクを選んだのか。なぜいまのスケーターのように段差を下りる動作を選ばなかったのか。スケートボードとサーフィンはともに細長い板に乗り、横向きに滑る動作を要求する乗り物だ。同じような動作を要求するが、その要求の中には同じ部分もあれば違う部分もある。違う部分とは板の長さによる直進性だ。

 

もしスケートボードがサーフボードと同じ位長くその長さにより操作性よりも直進性が強ければ、デッキを自由にコントロールすることは難しく発展はしなかったと思われる。推進力はサーフィンの場合は波の斜度であり、スケートボードはプッシュ(足で「漕ぐ」こと)で進む。操作性はサーフィン、スケートボードともに板に乗った足のつま先~踵の荷重でコントロールする(要は体重移動で曲がる)のだが、このコントロールする感覚が「同じ」なのである。

 

同じ要領でコントロールできることがなによりもふたつを強く結びつけ、結びついたことでスケートボードに乗ったサーファーは路上を海に見立て始めた。

 

サーファーは足の裏の感覚に敏感だ。常に変化し続ける安定しない波を捉えサーフボードをコントロールするには、サーフボードを通して伝わる波の動きに的確に反応しなければならない。その感覚がスケートボードに乗ったときに発揮されたおかげで、地面からの振動や地形の変化に敏感に反応し小さな差異にも気づくことができた。

 

サーフボードに乗ったときの揺れ動く波の変化が与えた知覚-イマージュが、現在の知覚であるスケートボードに乗ったときの地形の差異から波に似たものを再認し、体重移動によるコントロールとともにサーフィンとスケートボードの反応の同一性を感じさせた。

 

サーファーは足の裏から得られる知覚の源泉である地形に注意を向けたのだ。サーフボードと同じようにコントロールできるスケートボードで「波」を感じられる場所を都市に求めた。

 

PROFILE

栗原 啓輔

スケートボード研究家/スケート歴20年 (写真家)

https://twitter.com/kuriharakeisuk

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