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死者の日だってウェイしたい!〜ゆるゆるポーランド滞在記その2

この連載は、欧州天下分け目のポーランドから、東欧の現地事情をニュージェネレーションの声と共にお届けする、ゆるゆる現地滞在記である。

 

前編はこちらをご参照いただきたい。

死者の日だってウェイしたい!〜ゆるゆるポーランド滞在記その1

いざ、万霊節。

墓石に飾る花と言えば「菊」。しかし、これは日本だけの文化だろうと思いきや、ポーランドでも万霊節には墓に菊を供える。

 

 

色彩は日本の菊よりもシックで落ち着いた色に感じるのは気のせいであろうか。

アレンジメントは20~30cmのこんもりとした半球に揃えてあり、小さな花畑のようにギュッと敷き詰められて並んでいる様子には可愛らしいものがある。

 

 

墓地付近の開けた場所には露店が並び、多くの人々がこれらを買い求めていた。

ハロウィンの色は見当たらない、いくつかカボチャをデコレーションとして飾る店舗はあっても、むしろそれが浮きがちに見えるほどである。

 

では、いよいよ墓地の中に足を進めてみよう。

 

 

この時期のポーランドは天気が変わりやすく、晴れていると思いきや、霧のような小雨がちらつき落ち着かない。

この日もあいにくの天気で足元の状態はとても悪かったが、多くの市民が墓地を訪れていた。

初老の男性や女性、まだ小さな子供をつれた家族連れがもっとも多く見られ、やはり20代前後の若年層は少なく思えた。

 

墓の前に短い長椅子が据えられているのが興味深い。

長くこの場に留まり、眠る家族と話をするのであろう。

 

日本人は「ケガレ」の観点から、墓地には午前中に行くのが良いだとか、自宅に戻る前には塩で清めるだとか、墓地を非日常のケガレた場であると考える。

しかしキリスト教徒からすれば、墓地は汚れた現世より天国に近いクリーンな場所なのだ。

 

私のお墓の前で〜…という出だしから始まる歌がもはや懐かしい。

反してこの国では、「そこ」に愛しい家族が安らかに「いる」のである。

 

 

墓の前に置かれているのは菊、または造花であることが多い。

そして様々な形のランプには小さなキャンドルが灯されていた。

それが広大な墓地の、ほぼ全ての墓石に供えられているのだから、なんと厳かな光景か。

 

先ほどキリスト教はファッションと言い放ったルームメイトであるが、実はキリスト教系の学校を卒業しており、休日にはミサにも行く正真正銘のクリスチャンである。

 

彼女は、これらの美しい状景は、日々のボランティア活動があってのものだと語る。

クリスチャンをはじめ、キリスト教系の学校であれば、学生が墓地の清掃をボランティアとして行うこともあり、死者の日に全ての墓地に花が供えられているのも、彼らのおかげであるという。

 

 

京都化野の念仏寺にて、毎年8月末に催される千灯供養を訪れたことがある。

墓石の前、声をひそめる人々と、ジジリと蝋が燃える音。

日が落ちると共に浮かび上がる千の灯火は、驚くほどに酷似していた。

 

誰もが知っている、人は生まれ、死ぬという事実。

どのような宗教を持ち、どのような国に生まれようとも、それは変わらない。

 

まさに万霊節は、ポーランドの盆の送り火であった。

それでもやっぱりウェイしたい?

後日。キリスト教はファッションという爆弾発言の真偽を確かめるべく、脱ブラックバイトを果たし、インスタ映えしすぎるカフェのバリスタへと躍進を遂げた友人に話を聞いた。

彼は死者の日にはしっかりと故郷へ帰り、家族と共に墓参りをしたと言う。

 

彼の主張はこうだ。

「たしかに今の若者の間でキリスト教をファッションと蔑む流れはある。しかしクリスチャンであるないに関わらず、これは大切な日。失くしてはいけないと僕は思う。」

 

おめでとう。

やはり君はマックカフェなんぞで貴重な学生生活を無下にする男ではなかった。

今後もポーランドの未来を背負って、そのイケメン度に磨きをかけ続けて欲しい。

 

さて、これにて「死者の日だってウェイしたい」編は終了である。

 

次回の更新を待たれよ。

 

・連載記事

死者の日だってウェイしたい!〜ゆるゆるポーランド滞在記その1

死者の日だってウェイしたい!〜ゆるゆるポーランド滞在記その3

死者の日だってウェイしたい!〜ゆるゆるポーランド滞在記その4

ゆるゆるポーランド滞在記:特別編①「知られざるシロンスクの歴史」

ゆるゆるポーランド滞在記:特別編②「ポーランドは本当に親日国?」

PROFILE

ナカイ レイミ

東京芸術大学修士課程在籍。好きが高じて斜めに走る。「ゆるゆるポーランド滞在記」連載中

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