ESSAY, 美術

ラファエロの聖セバスティアヌスと『聖マルコ修道院のセバスティアヌス』 ー週刊聖セバスティアヌス②ー

全国の聖セバスティアヌス・ファンのみなさん、こんばんは!

良きキリスト者のみなさん、父と子と聖霊の聖名によって。アーメン!

 

みなさまにおかれましては聖セバスティアヌスへの傾倒と信仰に、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

 

 

本連載は、わたくし【タイヘイ】が欧州放蕩乞食旅中に発見した様々な聖セバスティアヌスをみなさんにご紹介し、セバスティアヌスに傾倒した多くの芸術家と三島由紀夫先生を顕彰する為の記事になります。

 

週刊聖セバスティアヌス①セバスティアヌスとは何者ぞ!?

週刊聖セバスティアヌス特別編セバスティアヌスと三島由紀夫(執筆中)

 

 

ルネサンスの巨匠ラファエロの聖セバスティアヌス

セバスティアヌス ラファエロ

ラファエロ作 聖セバスティアヌス 1500年頃 Accademia Carrara, Bergamo

まずご紹介するのは、巨匠ラファエロが描いた聖セバスティアヌスです。

 

まるでスラブ美少女のような柔らかで美しいこの青年は、実はあのセバスティアヌスだというのです!

 

肉体をさらけ出すことも矢傷を晒すこともなく、筆のように矢を手に持ち、法悦のような微笑をうかべています。

 

長い栗毛の髪はまるで生糸の束のような艶やかさ、しかしその胸鎖乳突筋、首から肩にかけての肉体のたくましさには男性を感じます。

 

しかしそれはあくまでも布の下の事。彼はなんと優雅な衣装をまとっているのでしょうか。

 

これがあの巨匠ラファエロの、セバスティアヌスだというのでしょうか!?

 

今週のセバスティアヌス フィレンツェ聖マルコ修道院の聖セバスティアヌス

こちらは、わたしタイヘイがフィレンツェの聖マルコ修道院に付属するサン・マルコ国立美術館を訪れたときに発見した、

 

手に矢を持つ聖セバスティアヌスです。

 

この修道院、実はあの宗教扇動者サヴォナローラがフィレンツェ指導者時代に暮らしていた修道院にして、

 

サイゼリアの内装でおなじみ、かの有名なアンジェリコの受胎告知のフレスコ画が院内の壁に直接描かれていることでも有名です!

 

もう、歴史と美術ファン垂涎の、だけど地味であまり日本人の来ない美術館がこのサン・マルコ国立美術館です!!

 

閑話休題、あらためて今週の聖セバスティアヌスを見てみましょう。

 

セバスティアヌス フィオレンティーノ

ロッソ・フィオレンティーノ 1530年作 

 

作者のロッソ・フィオレンティーノ Rosso Fiorentino 【1495年 – 1540年】はマニエリスム期のイタリアの画家です。

 

花の都フィレンツェ出身でイタリア北部を中心に活躍します。

 

1524年にローマに移住し、そこでラファエロの弟子との交流があったようです。(ラファエロは1520年に若くして亡くなっています。)

 

なので、このセバスティアヌスの絵画の矢を持つスタイルは、上記のラファエロの聖セバスティアヌスの絵画からの影響と考えることが出来ます。

 

しかしローマは1527年に神聖ローマ帝国のカール5世の軍隊(プロテスタントと傭兵が主体)に略奪をうけます。このとき、フィオレンティーノも【ローマ略奪】の被害をうけ、労役を負わされたようです。

 

1530年にヴェネツィアに移り、その後フランス王フランソワ1世に招かれフランスへ移り、フォンテーヌブロー城の改築に関わりました。そして城内の多くのフレスコ画を描きました。

 

フィオレンティーノと彼に続くイタリア出身のマニエリズムの作家たちが、フォンテーヌブロー派となりました。

 

制作年からローマからヴェネチアに移ったころに描かれたものと推測されます。

 

フィオレンティーノがルネサンス三大巨匠時代に続くマニエリスム時代の画家であり、

 

そしてローマにおいてラファエロの絵画に触れ、ラファエロの弟子やとの交流があったことを踏まえて、

 

あらためてこのフィオレンティーノ作【聖セバスティアヌスの殉教】を見てみましょう。

 

 

ラファエロの聖セバスティアヌスと同じように、右手で矢を持っています。ラファエロの絵ではまるで絵筆を持つように繊細に矢を持っているのに対し、

 

フィオレンティーノのそれは他にたとえようのない、美しい持ち方をしています。

 

また、どちらのセバスティアヌスも体に矢傷を負っていませんし、柱に体が縛られていません。

 

両者とも、セバスティアヌス(本来は壮年の兵士の図像であった)を若い男性として描いていますが、髪の長さに注目してください。

 

この当時、男性であっても上流階級では長髪にすることが流行していました。短髪はもっぱら、兜をかぶる兵士の髪型だったのです。

 

その意味で、フィオレンティーノの聖セバスティアヌスは兵士として描かれていると言っていいでしょう。また、ラファエロと違いこのセバスティアヌスは逞しい裸体を晒しています。

 

ラファエロの描いたセバスティアヌスは美しい上流階級の美青年であっても、前線に立つ兵士の姿ではありません。(あの聖職軍人チェーザレ・ボルジアも残された肖像画は上流階級らしい気品ある長髪のものです。)

 

ラファエロのセバスティアヌスは微笑と法悦を顔に浮かべているのに対し、フィオレンティーノのセバスティアヌスは、険しい表情で強く上方を睨んでいます。

 

「矢が刺さっても神の加護により痛みを感じず法悦する」 というのがセバスティアヌスのセオリーなので、矢の刺さる前のセバスティアヌスがまだ法悦を感じず、

 

これから起こる処刑を前に厳しい顔を浮かべるというのは、むしろ当然のことなのかもしれません。

 

またフィオレンティーノはこのセバスティアヌスを描く2,3年前に、実際に同じキリスト教徒による聖徒の破壊【ローマ略奪】を彼は身を持って経験しており、

 

このセバスティアヌスを通して、神の加護ではなく信仰の試練を描きたかったのかもしれません。

 

 

こちらもまた、信仰と肉体美を併せ持った、良いセバスティアヌスですね!

 

 

来週のセバスティアヌスにもご期待ください!

PROFILE

タイヘイ

桃栗三年柿八年、わたしはきっと五十年。 現在芸大休学生、もうすぐ休学を休みます。 好きな物は歴史とクラシックカメラ

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