ESSAY, 美術

団子よりなお一輪の花を 「ターナー 風景の詩(うた)」によせて

 

ターナーの作品を見るのは、実はこれが2度目。

1度目は6年前、あの時は京都ではなくて神戸の展覧会だった。

四半世紀ほど生きていて、私は両手に収まるほどしか美術館に行ったことが無い。

同じ画家を2回も見に行く、なんて驚くべき事態だ。

 

前回のターナー展の時は、さしたる感想もなく終わってしまった。

どう楽しんでいいものか、それがそもそも分からなかった。

なんとまあ野暮な話だ。

 

正直、今回のターナー展とて、別に「絵に興味があるから」行こうと思ったわけではない。「そう言えば前にも見に行ったなあ」という、ミーハーなノスタルジーがそうさせたのだ。

やっぱり、私は不信心な芸術愛好家だ。

 

でも今回のターナーは、6年前のターナーよりも「楽しい」ものだった。

近寄って筆の跡を観察したり遠くから眺めてみたり、解説を丁寧に読んでみたり。

幸い平日の日中だったので人足も少なく、並べられている一枚一枚と丁寧に向き合うことができた。

身近なところにあの絵が欲しい、とクリアファイルを(2種類も)購入してしまった。

それほどに、私はターナー展を確かに楽しんだのだった。

ときには「団子より花」だって

みんなどうやって絵を見ることを楽しんでるんだろう。

自分なりの楽しさを感じつつ、会場を回る私はずっとそんなことを考えていた。

芸大出とおぼしきお兄ちゃん、昼下がりの時間つぶしのじいさんばあさん。

絵が好きなお母さんとその息子、そして、デートの口実にしている若いカップル。

展覧会には、いろいろな人が来ていた。

 

現代は対価さえ払えば、芸術というのは誰に対しても開かれている。

そしてその対価とは、「ホンモノ」と過ごす時間に対して差し向けられている。

買った時間は自分のものなのだから、どのように過ごそうとそれは当人の自由だ。

そういう意味では、厳密な意味での「楽しみ方」なんてないんだろう。

ただ芸術である以上、それは表現行為だ。

1枚の絵に宿る表現は、過去形というよりもむしろ現在完了形の時制形式を持っている。

つまり、表現はまさに今ここにある。

見ることで絵と対話すること、それが「よりよく」(「正統に」ではない!)絵画芸術を楽しむことなのかもしれない。

 

1200円(大高生)というと、老舗の喫茶店でしっかりとランチが食べられる値段だ。

でも、たまには団子よりも花にお金と時間をさしむけてもいい。

「人はパンのみにて生くるにあらず」、とイエスも言っていたではないか。

 

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PROFILE

佐藤宗大

栃木生まれ、京都在住。ブラームスの流れる喫茶店を開きたい。

https://twitter.com/T_Sato_0626

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