ヴロツワフ ポーランド ストリートアート 滞在記

ESSAY, 海外

ゆるゆるポーランド滞在記 – その4「その落書き、合法につき」

この連載は、東欧の現地事情をニュージェネレーションの声と共にお届けする、ゆるゆるポーランド滞在記である。前回の記事は以下のリンクをご参照いただきたい。

 

ゆるゆるポーランド滞在記その3「クソ物件オブザイヤー in ポーランド」

 

ところで、筆者は引越し先が決まらず、愛すべきクソ物件にて冬を越すことが決まる。

内側はもはや仕方がないので、外側に着目してみることにしよう。

 

今回は、筆者が滞在するヴロツワフの街に点在する、巨大なストリートアートについて紹介する。

目立ちすぎる坊主頭

ヴロツワフ ポーランド ストリートアート 滞在記

 

側を通る誰もが目を惹かれるであろう、坊主頭の絵。

枕から溢れる100ユーロに硬貨と懐中時計、ころりと転がる歯がユーモラスだ。

 

実はこの真下にはおしゃれな隠れ家風カフェがあるのだが、このコラムでは容赦なくこの坊主頭にフォーカスしていくため、割愛する。

ヴロツワフを訪れた際は彼を手がかりにカフェを訪れ、インスタ映えを狙ってほしい。

 

ヴロツワフ ポーランド ストリートアート 滞在記

 

ちなみに、これが彼の夜の姿だ。

 

お気づきかとは思うが、元からある奇妙な配置の窓を、人物の目として利用している事がわかる。

昼は眠り、夜には部屋の明かりで目を覚ます…、建物と人の生活を上手く使った秀逸なストリートアートだ。

深読みすれば、枕の中に詰まったそれは、人が“昼に見る夢”なのかもしれない。

 

このグラフィティは、BLU(ブルー)というイタリアのストリートアーティストによって描かれたアート作品である。

今からおよそ9年前に、街がアーティストに直接依頼して制作されたものだという。

 

このように説明されれば、この作品が非合法の落書きではなく、合法のアートであると言うことはすぐに理解できるが、何の前置きも無しに遭遇すると判断が難しいものである。

 

ヴロツワフには、このような巨大ストリートアートが数多く点在する。

豆腐建築とは言わないで

ヴロツワフを訪れる多くの観光客は、リネック(Rynek)と呼ばれるメインスクエアを目指す。

 

だが、これらのストリートアートは、リネックに隣接するオドラ川を超え、ナドドジェ(Nadodrze)と呼ばれる地区に集中しているので、些か話題になりにくい。

 

ヴロツワフ ポーランド ストリートアート 滞在記

 

その上、この地区はバウハウス建築の影響を受けた後、第二次世界大戦後の共産主義時代に開発が進んだため、良くも悪くも装飾を最低限まで削ぎ落とした、箱型の建築物が乱立する場所でもある。

 

大戦以前の古い建造物も現存している為、様々な時代の建築様式が凝縮された地区としてみれば、建築マニアに格好のスポットではあるのだが、決して見映えが良いと言い切れない。

 

何故なら、より市民の生活に近いこの地区では、非合法なストリートアート…ダギングやヴァンダリズム(落書きや景観破壊行為)が、そのままに残されてしまっているのも事実であるからだ。

 

だが、秀逸なグラフィティには、寒空の下でも思わず顔を上げてしまうことだろう。

 

ヴロツワフ ポーランド ストリートアート 滞在記

 

この赤い靴を履いた豚も、Ericailcane(エリカイルカーネ)による作品の一つだ。

 

彼もBLU同様、イタリア出身のビジュアルアーティストである。

 

緻密な豚の描写のもさることながら、テラコッタ色の屋根と、アクセントに用いられている赤色が見事に調和し、無機質な壁面を見事にキャンバスへと昇華させている。

 

ヴロツワフ ポーランド ストリートアート 滞在記

 

これらの建築物の側面は不自然なほどに真っ平らで、建築としての魅力はゼロだが、キャンバスとして見れば大変に魅力的である。

 

非合法のタギング、合法のグラフィティ。

どちらが初めにこのキャンバスを見つけたのかは分からないが、ストリートアートによる景観の改善は、今やポーランド全体で進められている都市計画の一つでもある。

 

これらの計画に対する市民の反応は、概ね良いようだが、これだけ巨大で近くにありながら、「質問されるまで考えたことがなかった。」という反応が返ってくることも多い。

 

臭い鍋だから人は蓋をするわけで、無臭すぎると人は中身があることを忘れてしまうのだ。

 

増殖を続けるグラフィティ

最後にとっておきの場所を紹介しよう。

 

ヴロツワフ ポーランド ストリートアート 滞在記

 

ここは一風変わったアートスポットの一つである。

 

表通りから薄暗いトンネルをくぐり敷地内へ入ると、ぐるりと端から端まで内壁が絵で埋め尽くされている。

 

テーマは区画によって定められているものの、タッチに一貫性はなく、まさにおもちゃ箱をひっくり返したかのような光景が広がっている。

 

敷地内にこのワークショップを主導したOKAPというカルチャーセンターがあるので、それを目指してこの場所を見つけてほしい。

これをストリートアートと定めるかは難しいところだが、それらの源流の先に辿り着いた、ある一つの終着点であると筆者は考える。

 

ヴロツワフ ポーランド ストリートアート 滞在記

 

まさにポジティヴのカオス。

ところどころ立体作品が紛れ込んでいるのも、ウォールアートならではと言える。

 

ヴロツワフ ポーランド ストリートアート 滞在記

 

写真のように、人目につきにくい奥まった場所もある。夜に一人で訪れるのはお勧めしない。

ワークショップの目的の一端が治安の向上であるように、この周辺を良い治安だと言い切ることは難しいからだ。

 

ヴロツワフ ポーランド ストリートアート 滞在記

 

ちょうど絵が書き足されている場面に遭遇することができた。

驚くことに、このグラフィティは今でも増殖を続けているのだ。

 

その落書き、合法につき

日本でストリートアートと聞けば、おそらく多くの人が非合法の落書きを思い浮かべるであろう。しかし、ブロツワフでは前述したように、都市の建築の歴史的背景を踏まえながら、ストリートアートを新たな景観の改善に役立てている。

 

この街で決まり切った「地球の歩き方」に飽きたのなら、

ちょっと道を外れて、秀逸な落書き達をカメラに収めるのも、また一興ではなかろうか。

 

ヴロツワフ ポーランド ストリートアート 滞在記

 

二重の意味で非合法を感じる犬。

安心してください、合法ですよ。

 

さて、これにて「その落書き、合法につき編」は終了である。

 

次回の更新をまたれよ。

 

・連載記事

死者の日だってウェイしたい!〜ゆるゆるポーランド滞在記その1

死者の日だってウェイしたい!〜ゆるゆるポーランド滞在記その2

死者の日だってウェイしたい!〜ゆるゆるポーランド滞在記その3

ゆるゆるポーランド滞在記:特別編①「知られざるシロンスクの歴史」

ゆるゆるポーランド滞在記:特別編②「ポーランドは本当に親日国?」

PROFILE

ナカイ レイミ

東京芸術大学修士課程在籍。好きが高じて斜めに走る。「ゆるゆるポーランド滞在記」連載中

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