ESSAY

お金持ちはなぜバカ高いアート作品を買うのか?最も高い絵ベスト5

アート=めっちゃ高い

なんてイメージは、誰もが抱いていることでしょう。

 

わたしもそのひとりだ。

 

アート業界の本をめくってみると、

「アートはマネーゲームのひとつ」

とあって、実際、金融商品と変わらないらしい。

 

それでもなぜ、金持ちは、数千万、数億、数十億もの大金をはたいて、

アート作品なんざ買うのだろうか?

金で買えない「なにか」を、金で買う!

お金持ち、それも桁違いの大金持ちは、わたしたち庶民の想像以上の、

「快楽」

を味わいつくしている。

 

彼らからすれば、

いい服も、美味いものも、でっかい家も、いい女も、

すべて金で買える。

それでも物足りないときは、ヤバいドラッグも、じゃんじゃん使う。

 

マーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ主演の

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』

という映画では、そのあたりが露骨に描かれていますね。

 

そんな大金持ちでも、金で買えない「なにか」がある。

それも心のどこかに。

言語化できない「なにか」……!

 

その「なにか」を解消してくれるもののひとつが、アート作品なのだ。

 

金で買えない「なにか」を、金で買う。

 

矛盾しているようだけど、そうでもない。

だってそれしか、彼らには方法がないのだし、

むしろそれが金で買えるんだったら合理的じゃん、となる。

 

関連記事→お金って、なんだろう?

アートを買うこと=オレってすごいだろ?- 自己顕示の解消道具として

金持ちがアートを買う心理というか根底にある気持ちは、実に単純だ。

 

「こんな高いアートを持っているオレって、すごいだろ!」

 

これだけ。

 

現代アーティスト村上隆は、著書でこのように書いている。

「アートを知っている俺は、知的だろう?」

「何十万ドルでこの作品を買った俺って、おもしろいヤツだろう?」

 西洋の美術の世界で芸術は、こうした社交界特有の自慢や競争の雰囲気と切り離せないものです。

村上隆『芸術起業論』p.36

つまり、金持ちにとってアートを所有することは、

「自己顕示欲の解消であり道具」

と同義なのである。

 

村上隆はこの状況を肯定しているわけではない。

むしろ嘲笑してさえいる。

けれども、それが「現代アート世界における、事実上のルール」。

なので彼は、「そのルールに則ってゲーム(アート制作)をするしかない」と腹をくくり、戦略を練りまくった。

その結果、100年後の教科書に載るレベルの作家になったわけである。

アートはわたしたち庶民のものではない!

金持ち、というか権力者が、アートを所有することになったのは、べつに最近になってはじまったことではない。

 

絵画でも彫刻でも宝石でもなんでも、

「アート」とされるものは、古代から権力者のもの。

ルネッサンスはメディチ家が主導したようなものだし、

桃山文化は、戦国武将の膝元にいた連中が作ったものだ。

そこで生まれた作品を愛でるのも、もちろん時の権力者たち。

庶民なんて出てくる幕は、そもそもなかった。

 

庶民らに「アート」なるものがちょっとだけ近づくようになったのは、

近代革命を経たここ200年の話だ。

 

『モナ・リザ』の所有者の移り変わりが、その流れを象徴していますね。

フランソワ1世が買い取ったのを皮切りに、

ルイ14世、ナポレオン、転々としたのち、ルーブルへ。

 

「98%もいる第三身分の連中も、『モナ・リザ』ぐらい見ないとダメですよ!

 だってこれは、世界の宝なんだから!」

 

なーんて建前で、現在の権力者たる「国家」が所有し、

そしてその国家(ここではおフランス)の「自己顕示欲」を解消しているわけだ。

 

言ってしまえば、アメリカを中心とするアートの金融取引のそれと、

「名画」や「国宝」という建前で、お上が芸術作品を所有し展示する意図は、

構造的にはなんら変わりないことなのである。

 

歴史的にも構造的にも、アートなんてもんは、第三身分たるわたしたち庶民のものではない。

「身近なもの」にはなったとしても、わたしたちの手の届くところには決してない。

これは、100年後も1000年後も、変わらない話だと思う。

バカ高い絵、ベスト5(2017年現在)

さてここで、2017年現在、バカ高い値段がついたアート作品ベスト5をみてみましょう。

 

1位 デ・クーニング 『インターチェンジ』

Willem de Kooning/Interchange

約$300M (≒¥336億)

出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Interchange_(de_Kooning)

 

 

2位 セザンヌ『カード遊びを擦る人々』

Paul Cézanne /The Card Players

約$260M(≒¥300億)

出典:https://en.wikipedia.org/wiki/The_Card_Players

 

 

3位 ゴーギャン『ナフェア・ファア・イポイポ(いつ結婚するの)』

Paul Gauguin/Nafea Faa Ipoipo(When Will You Marry?)

約$210M(≒¥237億円)

出典:https://en.wikipedia.org/wiki/When_Will_You_Marry%3F

 

 

4位 ポロック『Number 17A』

Jackson Pollock/Number 17A

約$200M(≒¥224億)

出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Number_17A

 

 

5位 ロスコ『No. 6 (Violet, Green and Red)』

Mark Rothko/No. 6 (Violet, Green and Red)

約$186M(≒¥210億)

出典:https://en.wikipedia.org/wiki/No._6_(Violet,_Green_and_Red)


追記(2017/11/16)

 

1位が更新されました!

1位 ダ・ヴィンチ 『Salvator Mundi』

Leonardo da Vinci/Salvator Mundi 

約4億5030万ドル(≒510億円)

出典

 

510億!

 

2位のデ・クーニングを圧倒的な差で離してしまいました。

しかし、このイエス、怖い……

『モナ・リザ』のように本音が見えないというか。

 

今後、ダ・ヴィンチの代表作になり、モナ・リザ以上の価値が出る可能性、大いに潜めています。

 

追記終


 

↓記事再開

 

へーすごいなー、遺産相続のとき大変だろうな―、

と棒読みしたくなるほど、アホみたいな大金が動いているんですね。

 

1枚の絵を買うだけで、都心にいくつビルが建てられ、

貧しい子どもたちがどれぐらい救えるんだろうか!

なーんてことを、嫌味に考えてしまいますわ。

 

ま、これもまた、お金持ちからしたら自己顕示の道具に過ぎないわけで、

彼らは今後、最高値の記録を塗り替えていくことに精を出すのでしょう。

 

「オレ、世界一高い絵を持ってるんだよね!」

と、自慢できますからね。

 

それを聞いたお金持ちのお友達が、

「じゃあオレもっとすげえやつ買ってやるよ!」

となる。

かくして、アートの価格が暴騰する。

 

バブル期にあった「地上げ」とやってることは変わないのです。

 

なんの役にも立たないし、誰一人救えないものに、巨額のお金が費やされる。

すべては、お金持ちの顕示欲を解消するためだけに……!

 

 

そのあたりを、西岡文彦多摩美術大学教授は、こう述べている。

「顕示的消費」と呼ばれる競争相手への威嚇行為としての浪費が盛んになり、この顕示的消費の対象となる商品の価値は、その購入が威嚇を意味していることからもわかる通り、なにより高額であることが求められるようになったのです。なんらかの実用に供することは、ほとんど求められていなかったのです。

『ピカソは本当に偉いのか?』p.181

 

つまり、「高いこと」が前提であるからこそ、「価値がある」わけだ。

そんな構造を、「歴史のない国アメリカ」が作ってしまった。

というより、キャピタリズムを事実上の信条とするアメリカからすれば、

こんな構造ができるのは「必然」であった。

 

いつしかそれはアート売買のルールとなっていって、世界中に普及していった。

バブル期の日本が、120億円以上でゴッホの絵を買ったのも、それで説明がつきますね。

抽象絵画が楽しめれば、アートはなんでも楽しめる

最後に、バカ高い値段がついた作品そのものについて。

 

最近は抽象絵画が、お金持ちの間でブームらしい。

なので戦後の作品、とくにアクション・ペインティング系が、高騰しているのだとか。

 

抽象絵画といえば、

「アートとか、意味不明なもんだろ(笑)」

としている代表格であるけども、実はその「意味不明さ」を楽しむものだったりする。

 

で、また大金持ちからすれば、

「これの良さがわかるオレって、すごいだろ?」

と言ってくるのだけど、それはひとまず置いて、庶民目線で考えてみると、

抽象絵画を楽しめるようになれば、ほとんどのアート、

たとえばピカソやらマティスやらが、わかりやすくなるので、オススメです。

 

ジャクソン・ポロックとか、おもしろいじゃないですか。

あの、誰にでもかけそうな幼児的グチャグチャ感が!

 

夜中にストーン・ローゼズを流して、

ウィスキーのロックを舐めながら眺めてみると、別世界に行けるようで楽しいですよ。

 

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あの絵が理解したい!アートを楽しむために実践すべき3つのこと

 

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